佐世保ふるさと市場
MENU CLOSE

子供の1歳のギフトにわらじを

赤ちゃんの健康を願って、1歳の餅踏みのご準備を


誕生からの歴史と日本文化とのつながり


わらじは草履や下駄と並ぶ、伝統的な日本の履物の1つです。同じくワラを編んで作られた履物である藁草履と混同されがちな品ですが、草履は鼻緒だけで足に固定するのに対し、わらじは長い緒を足に縛り付けて固定する履物です。両立するのが困難な複数の職業をかねることを「二足のわらじを履く」と言いますが、草履や下駄に比べて重ね履きをするのが難しい構造なのが分かるでしょう。そのため脱げにくく、長距離や不整地を歩くのに適しています。また柔らかさと滑りにくさ、軽さを兼ね備えているので沢を歩く際には現在でも広く使われています。

江戸時代には庶民の間でも富士講、伊勢参りなど長距離を旅する機会が増え、わらじもより広く使われるようになりました。江戸時代の書物にも旅の心得として「わらじは値段を惜しまず質の良いものを選ぶべき」というようなことが記されており、旅の友として重宝されていたことが分かります。「足元を見る」という言葉も、相手の履物の状態を見て経済状況を推し量れることから生まれました。お金がある人ならばすり減って傷んだ履物はすぐ履き替えますが、貧乏な人は古いものをそのまま履き続けているからです。

なぜ日本では靴ではなくこのような開放的な履物が発達したかと言えば、まず高温多湿な気候が理由として挙げられます。足全体を覆う構造では足を保護するメリットより蒸れるデメリットのほうが大きくなってしまいます。素材となるワラも稲作の副産物としてたくさんあり、建材や縄の材料、燃料としても広く用いられていたのでいつでもどこでも安価で手に入るものでした。こうして安価で脱ぎやすい履物が普及したことにより、日本の家屋は玄関で履物を脱ぐ、土足厳禁の構造になったと言われています。

現代の使われ方は?



しかし、現代においてわらじはほとんど日常で用いられることはありません。柔らかい土の地面で適した履物であるので、舗装された固い道路とは相性が悪く、すぐにすり減ってしまいます。原材料となるワラも農業の形式の変化によって田畑にすき込んで肥料として用いられるようになり、流通量は著しく減少しました。その為木材を材料とする下駄、底の部分を別の素材に置き換えることでサンダルに近い履物に発展した草履と異なり、ほぼワラ100%であるために作られることも稀になり、むしろギフト品などに用いられる高価なものになりました。現代の登山家も合成繊維の縄を結って自作するケースが多く見られます。

このように日常からすっかり縁遠いものになってしまったわらじですが、それを逆手に取り前面に押し出したイベントが福島県福島市の夏祭り、福島わらじまつりです。福島の羽黒神社には全長12メートル・重さ2トンに及ぶ巨大なわらじが毎年2月の「暁まいり」において奉納されており、旅の安全などが祈願されてきました。これに由来し東北の短い夏を祝い、もう1つ巨大わらじを奉納することで1揃えにするために行われるようになったのが起源で、毎年8月に2日間の日程で行われています。

1970年に始まったこの祭りは福島の夏の風物詩としてすっかり定着し、東北6大祭りの1つに数えられています。同様の祭りは他にも日本各地で行われています。例えば三重県の波切神社では大きなわらじに赤飯を載せて海に流す「わらじ曳き」という祭りが行われています。もちろん、祭りの主役でなくとも祭りの際の和装の履物という本来の用途で用いられることもあります。

九州地方の風習



わらじの用途は大規模な地域のお祭りだけではありません。主に九州では「餅踏み」という子供の成長を祝う行事が行われています。子供の最初の誕生日にわらじを履かせ、大地に見立てた一升餅の上に立たせるという行事です。他の地域で行われる「背負い餅」「餅転ばし」等と同様の風習で、また九州のうちでも地域によって多少の差はありますが、いずれにせよ子供の健康と成長を願う行事であることに変わりはありません。

1歳の子供が自力で立てるかどうかは個人差がありますが、自力で立たなくてもつかまり立ちなどでも良く、地域によっては大人が支えて餅を踏ませることもあります。「一升」は「一生」にかけられており、餅の上に立つのは大地にしっかりと立って生きていけるように、という願いが込められた行事です。地域によっては餅を踏ませた後、様々な物品を子供に選ばせ、将来どんな道を歩むのかを占う「選び取り」が行われることもあります。本や筆記道具を手に取れば学者や作家、スポーツ用品を手に取ればスポーツ選手、楽器を手に取れば音楽家といった具合です。

これらの行事に用いる道具は地元の商店だけではなくオンラインショップなどで販売されていることも多く、また一升餅とセットでギフトになっていることもあります。色とりどりの縄で結われた小さなわらじは大変にかわいらしく、餅踏みの風習がない地域であっても、子供の成長を願うギフトとしては最適でしょう。





陶磁器・工芸品陶磁器・工芸品はこちら